第8章 Cold Rain
亡くなった隊士たちの家族に話をしたときのこと。
「娘を返してくれ」と泣きながらすがりつかれたこと。
何を思い返しても涙があふれ、震えが止まらなかった。
やがてその涙に呼応するように黒い雲に覆われた空からも雫が落ちた。
……ピシャン
桜の葉を伝って落ちた雨雫が地を穿つ。
降りだした雨は瞬く間に雨足を強め、ウルキオラはその雨から護るようにそっと沙羅の背に腕を回した。
一体どれだけの間そうしていたのか。
鳴りやまない雨音の中響く泣き声が、次第にすすり泣きに変わった頃。
ウルキオラは小さな――本当に小さな声で、呟いた。
「……おまえが自分を責める必要はない」
背中に回した腕に力を込めて
「責められるべきは……おまえの仲間を手にかけた破面だ」
いたわるように自分を抱くその温もりに包まれながら、沙羅はふと疑問を抱いた。
……なぜ?
少女たちを殺したのは『虚』だと、自分はそう言ったはずなのに。
それでも彼は『破面』と口にした。
「……沙羅」
彼が自分の名を呼ぶこの声が好きだった。
けれど今、なぜこんなにも胸が騒ぐのか。
「おまえの仲間を殺したのは」
「……俺だ」