第7章 You Can Cry
二週間ぶりに訪れた公園は相変わらずひっそりと静まり返っていた。
恐る恐る桜の木に近づいて、ほっとする。
だいぶ蕾が膨らんではいるが、開花はしていない。まだ彼との約束は果たせそうだ。
「……ウルキオラ……」
呪文を唱えるように、そっと音に乗せてみる。
無論声は返らない。元々こんな場所にはいるはずのない相手だ。
そうとわかっていても、呼ばずにはいられなかった。
この桜の木こそが彼との繋がりを感じられる唯一の場所だから。
「……ウル、キオラ……ウルキオラ……!」
呼び声は次第に嗚咽に変わる。
桜の幹に額を押しあてて、こみあげる涙を必死にこらえようとした。
ルキアはいいと言ってくれたが、やはり彼女の前で涙を流すことは躊躇われた。
隊士たちを救えなかった自分に、彼らの死を悼む権利なんてない――
その思いが懸命に涙を押しとどめた。
でも本当は
ずっとずっと泣きたかった。
苦しくて
哀しくて
胸が焼けるように痛くて
ずっと大声で泣き叫びたかった。
「…………っ」
ポタリ、と握りしめた拳に雫が落ちて
とうとう沙羅は自らに課した戒めを解いた。
「うあぁぁぁぁぁっ……」
胸の奥にひた隠しにしていた塊は、悲痛な叫びとなって沙羅の口からあふれだした――