第7章 You Can Cry
殉職した隊士たちの葬儀がしめやかに営まれたあと、任務監督者であった沙羅はその後の報告処理に忙殺された。
だが沙羅にとってそれはかえってありがたいことだった。こうして忙しさにかまけていれば、頭を悩ませる暇もない。
そして事件から二週間が過ぎ、久方ぶりの休暇をもらった沙羅は同じ十三番隊の隊士である朽木ルキアとともに現世へと向かった。
四人もの隊士が散っていった、あの場所へ。
「そうか……菜月はここで」
声を押しだすように呟いたルキアに、沙羅は墓石もなにもないその場所へ花を手向けながら頷いた。
ルキアとは同じ十三番隊の隊士として、席官に上がる前から親交を深めていた仲だ。沙羅にとっては気兼ねなく話せる友人のひとり。
沙羅が副隊長に昇格した直後こそ気を遣って「草薙副隊長」などと呼称を変えたルキアだったが、「それなら私も朽木家の令嬢に敬意を払ってルキア様とお呼びしましょうか」と笑った沙羅にたまらず元の呼び名に戻した。
ルキアにとっても沙羅は大切な友人なのだ。
そんな友の横顔を盗み見て、ルキアは人知れずため息をもらした。
「――沙羅」
「ん?」
振り向いた顔はいつもの凛とした表情に戻っている。一時(いっとき)前の横顔が幻のように。
だがルキアは知っていた。あの横顔こそが、今の彼女の素顔なのだと。
「……あまり自分を責めるな。十刃の襲来は予測不可能な事故だった。彼らの死はおまえの責任じゃない」
その言葉に沙羅は力なく「うん」と頷いた。
恐らくはもう何度も同じことを言われているのだろう。彼女を案じる多くの仲間たちから。
まるでいつかの自分のようだと思いながら、ルキアはもう一度吐息をこぼした。