第7章 You Can Cry
現世へ降りた調査部隊が十刃と接触したという情報はすでに瀞霊廷中に広まっていた。
「沙羅……」
帰還した沙羅を浮竹が沈痛な面持ちで迎えた。
「隊長、申し訳ありません……私の力不足です……」
唇を血が滲むほどに噛みしめて、頭を下げる。
「……おまえのせいじゃない」
ポン、と優しく肩を叩くと浮竹は横を通り過ぎて他の隊士たちへ労いの言葉をかけた。
そんな気遣いすら、今はただ苦しい。
私のせいじゃなければ誰のせいだと言うのだろうか。
今回の任務監督者は自分だ。任務中に起きた事象は全て自らの責任の元に置かれる。
四人もの隊士を死なせて。
誰よりも責められるべきは私、なのに――
こみあげる嗚咽をこらえる。
泣いてはいけない。それで赦されると思うな。
ぐっと拳を握って、顔をあげた。
「隊長。私、近親者のところへ行って話してきます」
「……俺も行こう」
「いえ……ひとりで行かせてください」
やんわりと首を振って断ると、浮竹もそれ以上はなにも言わず「わかった」と頷いた。
逃げるな。
甘えるな。
己のなすべきことをなせ。
近しい者の死を知らされた家族たちの罵声やすすり泣きを一身に浴びながら、それでも沙羅は視線を逸らすことなく「彼らの働きに感謝します」と告げた。
強くなれ。
力が足りないのなら、それを補って余りあるほどに強くなれ。
そう諭してくれた彼の微笑みを思い浮かべると、今にも折れそうな心も不思議と少しだけ前を向けた。
逢いたい。
あの人に、逢いたい。
心とは裏腹に広く晴れわたった空を仰いで呟いた。
この空の下のどこにもいるはずのない、異界の住人の名を。
*