• テキストサイズ

Dear…【BLEACH】

第6章 Mission


「頭痛い……」

 昇格祝いと称した大宴会のその翌朝、自室の姿鏡を前にのそのそと死覇装に袖を通しながら沙羅は顔をしかめていた。

「んん……沙羅~?」

 ふとベッドを陣取っていた乱菊が寝ぼけ眼をこすって首だけ振り返る。(昨夜主役を差しおいて真っ先に酔いつぶれた彼女は半ば無理やり沙羅の部屋に泊まりこんでいた)

「もう起きるのぉ? せっかくの休みなんだからゆっくり寝ようよー……」
「乱菊と違って私は任務なの! ……イタタタ」

 大きな声をあげると同時に脳を突き刺すような痛みが襲い頭を押さえる。
 昨晩、乱菊を幹事として催された沙羅の昇格祝いの席には十三番隊の面々はもとより、霊術院時代の同期を始めとした仲間たちが駆けつけ、大規模なドンチャン騒ぎは明け方近くまで続いた。
 祝ってもらえることは純粋に嬉しいが、翌朝早くから任務を抱える主役にとっては正直、つらいものがある。

「なに……あんた今日任務だったの? 早く言えばよかったのに」
「だから何回もっ……いつつ……」

 再び声を荒げて、呻く。もはや気分は最悪だ。胃の調子も。

「いいじゃない、少しぐらい遅れたって構やしないわよ。もうちょっと寝たらぁ?」
「そんな無責任な副隊長がどこにいるのよ……。今日は現世での任務だから時間厳守なの」

 皮肉をこめて返したつもりだったが、眠そうに枕を抱きかかえる乱菊は別の言葉に反応した。

「現世? へぇ~、また現世に行くの」
「……今日は任務だってば」
「今日は? あ、そう。今日は任務。んじゃ任務以外で行ってるときはなんなのかしら?」

 ニタリと目を光らせて体を起こす乱菊に、沙羅はしまったとあとずさりした。
 昨夜は乱菊が先に酔いつぶれてくれたおかげで追及を免れたものの、好奇心の塊のような彼女がそう易々と諦めるわけがない。

「さあ、沙羅ちゃん? ゆっくり聞かせてもらおうかしら……」
「ああっもうこんな時間! 私もう行くから出るときは鍵閉めていってね! それからテーブルの上に朝ご飯あるから! 行ってきまーす!」
「コラ! 待ちなさいっ!」

 逃げるが勝ち、とばかりに沙羅は部屋を飛びでた。

「……言えるわけないじゃない。破面と会ってるなんて――」

 かすかな呟きは、春の朝焼けにのまれて消えた。
/ 134ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp