第4章 Cloudy will be Fine
「――でもね、みんなはそう言ってくれてるんだけど、私はやっぱり――」
「……どうでもいいがなぜおまえは当たり前のような顔をしてここにいるんだ?」
「え? だめなの?」
桜の大木の上、隣に腰かけてわざとらしく驚いた顔を向ければ、ウルキオラは疲れたように首を振って「勝手にしろ」とこぼした。それを肯定と捉えて沙羅は話を続ける。
「……私はやっぱり自信がないの。みんなが私のことを信頼して言ってくれたのはわかってるし、嬉しいとも思う。だけど私はみんなが思うほど強くない――」
虚空に放たれた呟きにウルキオラはなにを答えるわけでもなく、ただじっと眼下の町並みを眺めている。その沈黙が今の沙羅にとっては心地良かった。
別に気休めを言ってほしいわけじゃない。ただ話を聞いてもらいたいだけなのだ。
「……前の副隊長はね、本当に立派な人だったんだ。口は悪いけど、いつも周りのことを気にかけてて。隊士たちはみんな彼のことを慕ってた」
どれほど時間が過ぎようと色褪せることはない。
大好きだった副隊長の笑顔。
「曲ったことが大嫌いでね、どんなことにも筋を通す人だった。部下に対してもそう。身分や出身に関係なく誰にでも分けへだてなく接してくれて。そういう人だったからこそ、みんな文句ひとつこぼさずについていったんだと思う」
隊主が病弱で不在がちな十三番隊がそれでも強固な団結力を保っていたのは、ひとえに副隊長・志波海燕の働きによるものだと誰もが認めていた。
その実直さゆえに、最期は妻の仇を討つべく単身虚に挑み――そして散っていった海燕。その穴はあまりに大きく、以来十三番隊副隊長の席はぽっかりと空いたまま埋められることはなかった。それほどに……かけがえのない存在だった。
「私だって隊を守りたい。海燕先輩のように……隊長やみんなの支えになれたらどんなにいいか……」
そう思う気持ちに偽りはない。けれど――
「今の私じゃあまりに力不足だよ……」