第13章 Bloom on Twilight
グリムジョーが放った虚閃と沙羅が打ち返した鬼道とがぶつかり合い、轟音と土煙を上げて相殺される。
互いにわずかな隙も覗かせない両者は一進一退の攻防を繰り広げていた。
「くっ」
グリムジョーが薙ぎはらった剣先が沙羅の肩を掠める。どれほどの霊圧が込められているのか、切っ先が軽く触れただけの白い肌は上下に裂け痛々しく鮮血を流した。
だが一方のグリムジョーも無傷ではない。沙羅が放った鬼道によりその白い装束は引きちぎられ、所々に赤が滲んでいた。
「俺はなァ、てめえみてぇな甘っちょろい考えのやつが許せねえんだよ!」
振りおろされた剣撃を弾き返し、グリムジョーは沙羅の首元めがけて剣を突きだす。
それを間一髪でかわし、沙羅はすかさず下から斬りあげる。だがそれもあと一歩のところで阻まれた。
「破面と死神が和解なんてできるわけねえだろ!」
「試してもいないうちから決めつけないで」
次いでグリムジョーが下段から放った蹴りを宙に跳んで|避《よ》け、詠唱破棄した鬼道をぶつける。
「相手を理解しようともしないで、どうしてできないなんて言えるの! 話し合えばなにか手段が見つかるかもしれないじゃない」
「それが甘いっつってんだよ!」
左腕にはしった電撃を顔を歪めて振りきり、グリムジョーもまた空中へ躍りでた。
「俺にとっちゃてめえは敵以外の何者でもねえ。破面と死神はどこまでいっても敵同士、生まれたときからそう決まってんだ!」
大きく振りかぶった剣の切っ先が西日を受けて赤く光る。
「俺たちにできんのは話し合いじゃなく殺し合い、それだけなんだよ!!」
グリムジョーの渾身の一撃をなんとか受けとめたものの、空中ではその衝撃を殺しきれず沙羅は大きく後方へ吹っ飛んだ。そのまま背後にあった木の幹に激しく背中を殴打し、むせ返りながらもすぐに体勢を整える。
口内にじわりと血の味が広がり、沙羅はぐっと歯噛みした。
限定解除した状態でもここまで押されるものなのか。力量の違いをまざまざと思い知らされる。
それでも退くわけにはいかない。
『破面と死神はどこまでいっても敵同士』
その言葉を覆さなければ、きっと今後ウルキオラにも逢うことは叶わない――そんな気がするから。
だから、絶対に、負けられない!