第11章 A Gray Cat
その後、霊圧の変動を察知し駆けつけた他の隊士たちより治療を受けた沙羅は、斬魄刀片手に唸りをあげていた。
「夢幻桜花!」
「咲き誇れ、夢幻桜花!」
「……ちょっと。斬魄刀振り回してなにやってんのよ」
呆れ顔の女隊士に、沙羅は困り果てた様子で首を捻る。
「いくら呼んでも解放できないんです。声も聞こえないし……どうしてでしょう」
「さあね~。さっきのは気まぐれだったんじゃないの?」
「えぇっ!? そんな……」
青褪めて斬魄刀の様子を窺っている沙羅に無遠慮に笑って、女隊士はぽんとその肩を叩いた。
「焦んなくたってそのうちちゃんと扱えるようになるわよ。いずれにしても斬魄刀が名前を明かしたってことは、あんたを持ち主として認めたってことなんだから」
「だといいんですけど……」
あからさまにしょげた様子の沙羅にくすくすと肩を揺らして、「ところで」と彼女は切りだす。
「あんた、うちの隊に入る気はない?」
「……え?」
「あんたの素質を見こんで言ってんのよ。あたしが口利きすれば霊術院は飛び級で卒業できるし、入隊試験も免除になるわ。悪い話じゃないと思うけど」