第11章 A Gray Cat
「だめ! 待ちなさ……っ!」
標的を変えた虚のあとを追おうとするも、体が思うように動いてくれない。
嫌だ
また目の前で誰かが死ぬなんて嫌だ
私がもっと強ければ
私にもっと力があれば――!
血が滲むほど斬魄刀を強く握りしめたその瞬間、だった。
『力を欲するのですか?』
唐突に。声が聞こえた。
「……え……?」
沙羅を取り囲むすべての時が静止する。
闘いの喧騒がかき消え、風が水面(みなも)を打つような穏やかな声だけが頭の中で響きわたる。
『なんのための力ですか? あなたの行く手を阻むものを斬る力ですか?』
「……違う」
ぽつりと呟いて、首を振る。
そんなものじゃない。
私が欲しいのは。
『では、なにを望むのですか?』
私が望むものは。
「護る力……」
大切に想うもの、すべてを
護る力が欲しい――
『いいでしょう。あなたがそれを望むのであれば。さあ呼びなさい。我が名は――』
「咲き誇れ――夢幻桜花(むげんおうか)!」