第11章 A Gray Cat
ギァンッ!!
女隊士の腕を振りはらって飛びだした沙羅は、雛森の前に立ちはだかり自らの斬魄刀で虚の爪を受けとめていた。
「沙羅ちゃ……」
「早く斬魄刀を!」
押しつぶされそうなほど重い一撃を必死に抑えながら、沙羅は背後で立ちすくんでいる雛森を振り返る。
「落ち着いて、雛森なら大丈夫!」
とてもそんな余裕はないはずなのに、笑みを浮かべてそう告げた沙羅に雛森は息をのんで吹っ飛ばされた斬魄刀を手に取った。
「……ごめんね。ありがとう。あとはあたしがやるから」
「うん」
キッと瞳を細めた雛森を見て、沙羅は今にも自らに食いこみそうなほどに迫っていた虚の爪を弾き返し、後方に跳ぶ。
「――心を失った虚よ! あなたを昇華する!」
たん、と高く跳躍して声高に言い放った雛森は、見事な太刀筋で襲いかかる虚を両断した。
「はぁっ……はぁ……。やっ、た……?」
断末魔の叫びをあげた虚が完全に消えるのを見届けて雛森は肩で息をつく。
「やったじゃないか雛森くん! 一撃なんてすごいよ!」
「真っ向からぶつかってくなんてオメーもなかなか度胸あんじゃねーか」
わっと駆けよった吉良と恋次に雛森は照れくさそうに笑って、すぐさま沙羅を振り返った。
「沙羅ちゃん……ありがとう」
「ううん、雛森の実力だよ。無事でよかった」
「ちーっともよかないわよ」
背後で響いた声に視線を向けると、女隊士が呆れた表情で見下ろしていた。