第15章 帰省後のひと騒動【山姥切長義、前田藤四郎他】
「ここまで入念に妨害工作をしてからの侵入だもの。狙いは本丸だったはずよ。気になるのは、本丸の何を狙ったかよね」
「おそらくデータです。パソコンへのアクセスの形跡がありました。……ですが、何も閲覧されておらず、ウイルスの類も検出されませんでした」
こんのすけが報告しつつ、首を傾げる。
「じゃあ、データの閲覧あるいは、取出が目的だったけど、肝心のデータが見つからなかったってところかしらね。それで式神に他に保存媒体がないか、調べさせてたとか」
わざわざ正体がバレる危険を冒して式神を使ったのだ。
相当焦っていたことが窺える。
「……ですが、このパソコンには特にパスワード設定はされてませんよね?」
そう、前田の言う通り、執務室のパソコンには誰でもアクセスできる。
彩鴇以外にも長谷部や博多がよく使っているのだ。
「だってそのパソコン、会計ソフトが入ってるだけだもの」
仮にこの本丸の勘定が改竄されても、収支の証拠である書類やデータは別に保存されており、最悪クラッシュして一から作り直すことになっても、そこまで手間はかからないのだ。
「各拠点の戦績とか、政府からの任務情報、時間遡行軍の動向なんかの重要情報は、こんのすけか私の眼鏡型デバイスからしかアクセスできないようになってるのよ」
彩鴇は得意気にクイっと眼鏡を上げる。
「だからそのパソコンのセキュリティはガバガバだったのか……」
長義がここに赴任して、初めてこのセキュリティ体制を見たときは、我が目を疑ったほどだったが、それであれば納得がいく。
報告をまとめ、こんのすけにデータを政府へ送信してもらう。
「……さて、政府への報告も完了だ。おそらく、後日結界の強化が入るだろう」
やれやれ、帰省から戻ってきたと思ったら、とんでもない大仕事になってしまった。