第12章 SANIWA Blues【大包平、鶯丸他】
決行の日、庭に実行部隊となる短刀達が集められた。
「術式の書き換えって初めてやります!主君、僕がんばりますね!」
「普段は屋根に登ると怒られるもんな」
「厚兄さん、登ったことがあるんですか……?」
普段は禁止されている屋根へ行けるとなって、程度の差はあれど、皆心を弾ませている。
「説明を始めるわよー」
彩鴇が手を叩いて静かにしてねと合図する。
「今から皆にやってもらいたいのは、屋根に組み込んだ霊力変換術式の書き換えよ」
本丸の見取り図を広げて、書き換え場所を示す。
「で、書き換えるにはこの札を使うの。霊力を流すとこの札を置いた瓦を中心に周囲1枚ずつ、最大9枚の瓦の術式を一気に書き換えるようになってるから」
彩鴇は説明しながら、色のついた札を渡していく。
「それぞれ札と同じ色の印が屋根に付いているから、その屋根一面の瓦の術式が書き換わるように動いてね」
札を受け取った後藤藤四郎が質問なんだけど、と手を挙げる。
「この札、靴の裏に貼って、霊力を通してもいいのか?」
「うん、どんな形であれ瓦に置いて、霊力を流せばいいわよ」
「屋根の印をつけ終わったぞ」
「ありがとね、やっぱり脚立を使わなくていいと早いわ」
短刀達に通信札を配り終える頃、大包平が戻ってきた。
「あ、大包平!あるじさまにまるなげして、どこにいったかとおもいました」
「丸投げなどしておらん!」
今剣の言葉に大包平は反論する。
確かに今剣を含め、短刀達に声をかけて回っていたのは大包平なので、決行日にいないことに疑問を持つのは当然なのだが、彩鴇より背の高い大包平が屋根に印をつけていくのが効率的だと判断したのだ。
「屋根から落ちないように気をつけてねー!!」
「万が一落ちてもうまく着地できますから、ご心配なく!」
屋根に上った短刀達に注意を促したものの、彼らにとっては普段の戦場に比べれば、なんということはない。
日頃の戦いで培った機動力を発揮して、屋根に仕込んだ術式変更はその日のうちにすべて完了した。