第12章 SANIWA Blues【大包平、鶯丸他】
「うわあぁぁん!」
宴会の席に嵐が訪れた。
「わたしだってねぇ、がんばっているんですよ!」
お猪口を片手に真っ赤な顔をした彩鴇が急に泣き出したのだ。
こうなってしまうとこの審神者は少々面倒くさい。
始まったと言わんばかりに燭台切光忠は肩をすくめる。
「通信術式とか位置情報を審神者記録する術式とか、いろいろ改善してるんだからぁ!」
泣く泣く自身の努力を訴えているが、呂律が回っていない。
「なのに、政府は『安全性が低い、緊急性がない、却下』だって、横暴じゃないっ?!」
食卓に拳を叩きつけ、日頃の鬱憤をあげつらう。
「前回の審神者会議のときは『本丸の結界性能向上のために霊力出力を上げろ』って言われたのよ?!みんなできるだろって涼しい顔してたけど、そんな簡単に上げられないんだから!」
政府は簡単に言ってくれるが、こちとら自前の霊力ではないので、出力を変えるには術式を変更しなければならないのだ。
彩鴇は本丸のあらゆる場所に術式を組み込んでいるので、それをひとつずつ変更するなど考えるだけで嫌になる。
「くそぅ、格差社会……!」
恨めしそうにそう呟き、ぐいっとお猪口を干す。