第2章 冬将軍【歌仙兼定、乱藤四郎、愛染国俊他】
空気はしんと冷え、空はどんよりとした雲で覆われている。
季節はもう冬である。
「寒い寒い!」
「お疲れ様、葛湯でも飲むかい?」
馬当番から帰った彩鴇を夕食の準備をしていた歌仙兼定が労う。
この時期の外仕事は寒さが身に沁みる。
「今日の馬当番は長かったね。何かやっていたのかい?」
「今夜あたり雪が降りそうだからね、馬の練習場に置いてあった障害物を撤去してたのよ」
ー雪ー
刀剣男士たちにとっては人型になって未だ見たことがないものだ。
この審神者が就任したのも大寒を少し過ぎた頃だったはずだが、結局雪は降らないまま春になったのだ。
もちろん知識としては知っているが、胸躍る気持ちも否定できない。
自ら触れる雪はどんなものだろうか。
「わぁ、見て!雪が降りはじめたよ!」
日が沈み始めた頃、灰色の空から白い雪片が次から次へと舞い落ちてきた。
乱藤四郎が窓辺から明るい声で皆に知らせる。
はらはらと舞っていた雪は次第に吹雪に変わっていった。
天気予報では吹雪は夜の内に収まるらしく、夕食の席では短刀たちが明日雪合戦をしようと話し合っている。
そんな中彩鴇だけは浮かない顔をしていた。
翌朝−
「主さん、雪だぜ!」
彩鴇を起こしにきた愛染国俊は今にも外に駈け出さんばかりだ。
「遂にこの時が来てしまった……愛染くん、皆を大広間に集めて。作戦会議をします」
神妙な面持ちで何を言っているのか。
よく分からぬまま、愛染を含め、他の刀剣たちも集められた。
「皆、集まってもらったのは他でもない。この冬将軍が放った刺客を退治しないといけないわ!」
「冬将軍の刺客?」
息巻く彩鴇にいまいち現状を理解できていない刀剣たち。
「そう、憎き白い悪魔、この積雪よ!!」
スパーンと音をたてて襖が開かれる。