第9章 相互理解には程遠い【白山吉光、歌仙兼定】
審神者・彩鴇と初期刀・歌仙兼定を観察し、所感を報告せよ。
顕現間もない白山吉光は、政府から命を受けた。
「ここの茶碗を並べ替えたのは主かい?!」
「だって間隔を詰めた方が、たくさん置けるじゃない」
どうやら棚に並べた茶碗を彩鴇が勝手に動かしたようだ。
歌仙の基準で美しく並べられた茶碗は、今や見る影もなく、無残に重ねられているものもある。
「この茶碗は、見て楽しむものだ。重ねたら傷付くかもしれないし、美しくないだろう?勝手に動かさないでくれ!」
そこから、やれ主は芸術を理解しないだのと彩鴇はこってり絞られた。
「ちょっと歌仙!このパソコンに何したのよ、真っ青じゃない!」
今度は彩鴇が歌仙に詰め寄っていた。
どうやら歌仙が使った後、不具合を放置していたようだ。
「僕は何もしていないよ。何もしていないのに壊れてしまったんだ」
「古今東西、パソコンを壊す人はみんなそう言うんですーっ!」
何をやっているときにどのキーを押したのか等、しつこく問い詰めている。
その後も観察を続け、白山はひとつの結論に至った。
審神者・彩鴇と初期刀・歌仙兼定は不仲である。
これは良くない兆候だ。
審神者と刀剣男士の不仲は、お互いのストレスになる。
本丸での滞在時間が長いこの業種では、それが原因で刃傷沙汰になることも珍しくない。
しかも、本丸の屋台骨となる初期刀との不仲だ。周囲にも影響が出ていないか確認すべきだろう。
「主と歌仙か、確かに気の合う仲とはいかないが、不仲とは些か違うぞ」
三日月宗近の答えは、白山にとっては理解しがたいものだった。
「具体的にどこが、どう違うのですか?」
「ふむ、互いに譲らぬから、ぶつかって見えるだけなのだ」
それを不仲というのではないか、白山は怪訝そうな顔をする。
「納得いかぬなら、他の者にも聞いてみるとよい。そなたの懸念も解消するやもしれぬぞ」
果たして本当にそうだろうか。