第6章 料理は時代とともに変わるもの【信濃藤四郎、歌仙兼定他】
「大将の手料理が食べてみたいな」
「え、私の手料理?……審神者になる前は自炊してたし、作れるけど、歌仙とか堀川くんとか光忠の方が美味しいと思うよ」
信濃藤四郎からの期待の眼差しに一応釘を刺しておくが、久しく食べていないものがあることを思い出し、厨房に立つことにした。
「そうね、今あるもので作るとして……30分弱ってとこかな」
棚からペースト状のものが入った袋を取り出して、料理に取り掛かる。
宣言通り30分後ー
「あんな短時間でどうやって作ったの!?」
できた料理の品数が多い。
コロッケ、唐揚げ、オムレツ、温野菜のサラダ、餃子、酢豚、煮魚、佃煮まで、和洋中の料理が食卓に並ぶ。
いつも台所に立っている歌仙達より時間あたりの品数は多いだろう。彩鴇にこんな特技があったとはと驚く。
「全部大豆の加工品だからね」
「えっ?!」
彩鴇の口から出た言葉に理解が追いつかない。今まさに口にいれた煮魚も大豆なのか、だが味や食感は魚のそれだ。
たまに無性に食べたくなるのよね、と彩鴇は唐揚げを口に運んでいる。
「歌仙からは『こんなの食文化の衰退だ』って怒られたんだけど、私の時代ではこれが標準なのよ」
彩鴇からすれば、故郷の味である。
この大豆には必要な栄養素が全て含まれており、日常的にこの大豆加工品を食べているのだ。
人口爆発が著しかった2100年頃に開発されたこのパーフェクト大豆は、厳しい環境でも良く育ち、加工もしやすい、何より必要な栄養素をすべて補えることから、瞬く間に人類が直面していた深刻な食糧危機の救世主となったのだ。
「むしろ本丸の畑で作っている野菜なんかは高級品よ。それらを使って料理をするなんて、お金持ちの道楽だったんだから」