第5章 平凡の難しさ【次郎太刀】
「……少し不思議なのは、霊力が少ないのに刀剣男士の数が多いって所だね」
彩鴇やこんのすけの話を総合すると、霊力が少なければ呼び出せる刀剣男士の数も少なくなるはずだ。
それに伴って戦績も低くなるであろうことも想像がつく。
だが、この本丸には現在確認されているほぼすべての刀剣男士がいるし、戦績も並以上なのだ。
「そりゃ、私の開発した霊力変換術式で、不足分を補っているからよ」
彩鴇自身の霊力だけでは、到底この本丸の規模を維持できない。
それを補うために太陽光、風力、水力、火力、時には雷の電力を霊力に変換、貯蓄する術式を開発し、刀剣男士の顕現にほとんど自前の霊力を使わずに済んでいるのだ。
もちろん、駆け出しの頃はそんな便利なものはなかったので、苦肉の策として手伝い札から霊力を取り出して使ったりもした。
こんのすけに手伝い札の仕組みをしつこく聞いたものだ。
「努力もそこまでいくと、執念だねぇ」
「どうしても審神者になりたかったの!自分の霊力が低いことは知っていたけど、まさか他とここまで差があるとは思ってなかったんだから」
むぅ、とふくれる彩鴇の頭を次郎はくしゃりと撫でる。
決して審神者に向いているとは言えない主が研鑽と試行錯誤を重ねてこの本丸を作り上げたのだ。
身内贔屓かもしれないが、その努力が誇らしい。
「主がそこまで頑張って呼んでくれたんだ。アタシ達もそれに応えないとね」