第13章 俺のものになれ
謙信と春日山城を出て一刻程たったころ
不意に馬の速度が落ちた
『どうなされたのですか?』
「・・・少し休憩をする」
小さな泉の畔に馬を近づけ葉月をそっと日陰の草の上におろした
『この様にゆっくりしていて良いのでしょうか』
馬に水を飲ませている謙信の背に葉月は声を掛けた
「問題ない
それよりも体は大丈夫か?」
謙信は葉月の傍に腰を下ろし
ずり落ちかけている葉月の肩に打掛をかけ直した
『ありがとうございます。謙信さま』
ここ最近体調不良でずっと寝ていた葉月は
ここまでの短時間の馬の移動でも疲れていたのか
木陰で涼やかな風に吹かれうつらうつらと微睡んでいた
「葉月辛いなら少し寝ると良い」
『は・・い。おやすみ・・・な・・・・さい』
謙信に抱き寄せられ腕の中で寝息を立て始めた
四半刻程泉の畔で休み寝ている葉月を起こさぬよう
しっかりと抱きこみ馬に乗りゆっくりと駆けだした