第2章 家出
『どうしましょう・・・・・迷った』
舘を抜け出したのは正午前
今は辺りがだんだんと薄暗くなった夕方
『失敗した。
私、一人で舘から出たことなかった・・・』
近道しようと森に入ったのがよくなかった
進めど進めど木、木、木
三百六十度どこを見ても木しか生えていない
『仕方ない。真っ暗になる前に
眠れそうな場所でも探しましょう』
キョロキョロと辺りを見回しながら
歩くも眠れそうな場所が見つからず
『・・・木にでも登る?』
「木に登るのかい?」
『それは最終手段・・・・え?』
声が聞こえ後ろに顔を向けると
近くの木に凭れてクスクス笑いこちらを見ている男性が居た
「こんばんは。可愛い姫君」
『・・・・・どちら様でしょうか?』
"姫君"と言われ警戒しじりじりと後退をしていく
「もう日が暮れる」
『ええ、そうですね』
葉月が後退した分だけ男は前に進んでくる
「家に帰る時刻だ」
『嫌です。もう舘には帰りません』
男は葉月の言葉に小首を傾げて
舘?と呟き動きを止めた
その隙に葉月はクルリと向きを変え走りだした
「そっちは危険なんだかな~
佐助いるか?」
「はい」
「訳あり姫をアイツから護ってくれるか?」
分かりました。と葉月が去って行った方向へと走って行った