第9章 頑張る
『夕餉を頂き・・・食べま・・・食べよう』
「・・・ふっ」
『家康、笑わないで下さいませっ!』
下を向いてぷるぷる震える家康に
葉月は頬を膨らませた
「言葉戻ってるよ」
『もうっ!食べよう』
「うん。食べようか」
箸を持ち食べ始めた葉月の向かいでは
何時もの如く大量の唐辛子をかける家康
『辛く・・・ない・・・の?』
「全然、葉月も食べてみる?」
『では、おひと・・・いえ、ひとつ頂き・・・貰う』
はいっと箸で煮物を持ち上げ口元まで運ばれた
おずおずと口を開きパクッと食べた
あまりの辛さに口をおさえ並みだ目になった
吐き出すわけにもいかず
急いで水を口にして喉に流し込んだ
『辛っっ!!!』
「そう?これくらい普通でしょ」
『えっ!!普通じゃない
可笑しい家康の味覚可笑しい!!』
クスクスと楽しそうに笑う家康
「言葉、ちゃんと喋れてる」
『本当ですか?気づきませんでした』
「もとに戻った」
『が、頑張る』
家康の部屋の前を通過していく
女中や臣下の者たちは
部屋から楽しそうな声が聞こえ
嬉しそうに頬を緩ませ廊下を歩いていった