第7章 下ろしてください
「酷いです信長様!
姫様は信長様の言い付けを守って
館にこもっていたのに!!」
勝手に嫁ぎ先を決められた事を聞いた椿は
女中の立場も忘れ信長に詰め寄っている
葉月はやっと信長の膝から解放され
少し後ろに下がり二人を眺めていた
「・・・・聞きたい事があるんだけど」
『何でしょうか?』
ずっとつまらなそうにそっぽを向いていた
蜂蜜色の髪に翡翠色の瞳をした男性がポツリと話しかけてきた
「五年前の誘拐の犯人って・・・
あんたの護衛?」
『よくご存じですね
確かにあの時の犯人は護衛の一人でした』
「あんた・・・・・」
「なに話してんだ家康?」
二人で話していると政宗が
にやにやと笑みを浮かべ割り込んできた
「政宗さん・・・・何でもないです」
「お前から女に話しかけるなんて
珍しいことが何でもないわけないだろ?なあ、光秀」
「そうだな政宗。槍が降るかもしれんぞ」
『まあっ!槍が降るのですか!?
それでは早々に待避しなければなりませんね
そう言うことですので私は此れで失礼致します』
「「は?」」
言うや否やスッと立ち上がり
優雅に広間から廊下へと出た
『私、帰らせて頂きます。
さようなら・・・・兄さま』
兄さまという葉月の言葉に
秀吉が可笑しな声を上げた
「この城から出られると思っているのか?お市」
『その名は捨てました今は葉月です。兄さま』
"お城には抜け道の一つや二つ隠されているものですよ?"
そう言い葉月はスタスタと歩き去った
「姫様っ!お待ちください!!」
椿は慌てて葉月を追いかけて広間を出ていった
「・・・・・・」
「家康、何処へ行く?」
「俺は仕事があるので後殿に帰ります」