第5章 お断り
「秀吉、こいつが信長様を助けたって言う女か?」
「ああ、大人しく一緒に来い」
崖を背に振り向けば先程のタレ目の男性と
片方に眼帯をしている好戦的な男性がいた
『しつこいですね。お断りいたします』
「信長様が嫌なら俺の女になれよ」
『私が貴方の物になるなどあり得ません』
にっこりと笑顔を浮かべてバッサリと切り捨てた
「へ~おもしれぇ」
「政宗っいい加減にしろ!
さっさと連れていくぞ!!」
「へいへい
まあ、そう言うわけだ諦めろ」
ふうっとため息をつき一歩後ろに下がった
カラカラと小石が崖から転げ落ちる
「おいっ危ないぞ!」
『それなら仕方ありません
私は死んだとあの人にお伝えくださいませ』
「何を・・・・・なっ!!」
クルリと振り向き崖に飛び降りた
慌てて秀吉と政宗が駆け寄り覗き込むと
ヒラヒラと打掛が落ちていくのが見えた
「身投げするほど嫌だったとは・・・・・」
「どうする秀吉
下におりて確認するか?」
「この高さでは助からないだろう」
「仕方ねえ帰るか。それにしても残念だな
綺麗な黒髪、赤い瞳の美人だったのにな」
声が遠退き足音が聞こえなくなった
「葉月、怪我はないか?」
『ありがとうございます。
謙信さまがいらっしゃってびっくり致しました』
「佐助から聞いて待っていた」
飛び降りた着地地点に謙信がいて体を抱きとめた
そして秀吉と政宗が去って行くまでの間
しっかりと葉月を抱きしたまま息を殺していた
「帰るぞ」
謙信は葉月を抱き上げたまま歩きだした
『謙信さま、歩けます』
「その様な煤だらけの青い顔色で言っても説得力はない。
大人しく抱かれていろ」
『・・・・ありがとうございます』