第3章 僧侶の疑念
天月ちゃんの背に庇われているので、彼女の表情は窺い知ることはできないが、その怒りを含む声に空気は重たく感じる。
天月ちゃんは、たまに天月さんに変わることがある。
私もなんのことかよくわからないが、取っつきやすいのが天月ちゃん。取っつきにくいのが天月さん。
(うん。我ながら意味がわからない)
顕如さんは警戒の色を滲ませた。
「それはこちらが聞きたいものだ。まああの女子よりかは頭が回るようだ。しっかりと注意しておけ、このような場所に無闇矢鱈と踏み入るなと」
天月ちゃんはちらりと倒れている人を見て、「あー」と納得したように声を出す。
そして彼女の雰囲気ががらっと変わるのがわかった。
「ご忠告ありがとうございます。それでは失礼いたします」
がしりとてを掴まれ路地から出て、天月ちゃんは何も言わず先を歩く。
「……あの」
「……煩い黙れ」
「はい」
天月ちゃんの低い声にひゅっと息が肺に戻る。
それから舞はあの光景がショックだったようで、最近引きこもりになっていたが蘭丸の計らいにより、舞は元気を取り戻したのであった。