第1章 戦国時代にて
空には雷が鳴り始め、それは次第に大きくなり雨風と雷を吹き荒らす。空は黒く、それはまるでブラックホールを思わせるほどの凄まじさを評していた。次第に激しさを増し、森の木々が倒れるほどまでになる一方だった。10分も経てば、雨や風そして雷さえ嘘のように鳴りを潜めてしまう。
大型台風が去った空の下、満天の星空を見上げる男女がいた。
2人は全身びしょびしょで見るに耐えない姿である。2人のうちの片方は、白い着物を着ており、腰元には刀と木刀を携えた女性。もう1人は、白い着物に黒のジャケットを羽織っており、腰元にはやはり刀が携えてある。
2人の視線があった刹那、ピリピリとした空気が立ち込める。
「てめえ、何しやがった」
「心外だな、俺のせいではないぞ白夜叉」
「信用できねえ、前科があることを忘れんなよこの糞忍び」
「何度も言うようだが、俺は忍びではないぞ」
「じゃあ」
「さむらいでもない」
「じゃあなんだよ」
「俺は何者でもない。まあしいていえばただの貴様の敵だ」
白髪の下から覗く瞳が一瞬狂気に満ちる。
「まあこんなところでやりあうのは得策ではないだろう白夜叉」
「ああ」
「もしやここは」
隣にいる女性に同意を求めようと目を向けると、苦しげに歯を食いしばり怒りに耐えているようだ。
「やはりお前も感づいたか」
「……っ」
「……っ」
2人は近づいてくる気配を同時に察知し、そそくさと茂みへ隠れこむ。言葉の内容が聞こえすぐ前を通ることがわかり、そっと聞き耳を立てることにした。
「ちょっ信玄様速すぎですよ」
「夜が明ける前に着かないとな? 幸村も文句言ってないでちゃんと馬の手綱握ってないとな」
訳がわからんと隣を見るが、彼女も彼同様固まっている。いや、彼以上やもしれない。
「なんだよ.…これ
「ううん」
彼女に続き悩ましげに鼻で唸る。
不意に立ち上がる彼に不安だと言いたげに眉を下げた。
「どこ行くんだ」
「白夜叉、ここからは別行動にさせてもらう」
「は! 一緒に行動しないわけ?」
「ああ。織田に向かう気はないからなあ」
「じゃあウチも」
「ふっ。それにだ、2人で手分けすれば情報が集まりやすい。白夜叉、貴様ならわかりきっているだろう」
「ああ………そうだな。ただ、武器は互いに隠した方がいい」
男はふっと笑う。