第2章 兄妹
ばつが悪そうにアリスが呟いた。
そうか、そう言う事か。もしかしたら自分達は異母兄妹かもしれないと言いたいのか。
「ねえ、リドルのお父様って何て言う名前なの?」
「父の名前は――僕と同じ、トム・リドルだよ」
「そう……」
何を期待していたのか、愚かしい。孤児院に預けられた時点で、父に捨てられたと言う事は分かり切っていた事じゃないか。それなのに――落ち込むリドルと同じように、アリスもまたガッカリしたように肩を落とした。
「残念ね、折角兄妹が増えたと思った、の……に……」
突然コルウスは胸を抑え、呼吸を荒くした。苦しそうにその場にしゃがみ込むと、コルウスがアリスの肩を抱いた。
「苦しいのか!?アリス!!」
「ちょ、ちょっと……疲れが、出た、みたい、なの」
コルウスはアリスを抱きかかえると、ふくろう小屋の階段を走って下りて行った。
いったい何が起こったんだろう。好奇心も合い混じって、リドルは2人の後を追いかけた。
着いた先は医務室だった。マダム・ポンフリーが慌ててベッドを用意すると、コルウスはそこにアリスを寝かせた。
アリスは心臓辺りを押さえながら、ハアハアと荒い息を繰り返している。マダム・ポンフリーは水薬をアリスに飲ませると、アリスの呼吸がだんだん治まり、やがて静かに眠り始めた。
「どうしたんだ?いったい……」
「アリスは……妹は重い心臓病なんだ。もう……永くない」
「それなら聖・マンゴ魔法病院に入院させれば――」
「そんな金があったらもうとっくに入れてる!!」
その端麗な容姿とはうって変わって、コルウスが顔を歪めて大声を張り上げた。マダム・ポンフリーが悲しそうな目でアリスの手を握っている。
そうか、コルウスが金を盗んでいるのはもしかして――。リドルは薬で眠るアリスの顔を見た。
やがてコルウスはマダム・ポンフリーに「妹を頼みます」と短く一言だけ告げると、医務室を出て行ってしまった。
家族のいないリドルには、コルウスの気持ちが分からなかった。いや、分かるはずが無かった。分かっていたらきっと――のちの未来は変わっていただろう……。