第7章 胡蝶の夢
どこの星か分からない、人の住む町に俺は存在していた。
見たことのない衣服を身にまとい、不思議な発音の言葉を話し、地下鉄に乗って窓の外を見ていた。
駅に到着すると、数人の女の子の集団が乗ってきた。
いかにも観光客といった装い。
その中の一人と目があった。
見たことがあった。でも思い出せない。会ったことがあるはずのない、異国の女性のはずなのに。
俺があまりにもじっと見つめていたものだから、彼女は困った顔をして窓の外に視線を映した。
でも、すぐに彼女は俺に視線を戻した。
そして、彼女もまた俺の顔を見て何かを考えている風だった。
しかし、次の駅に到着し、彼女はその駅で他の友人らとともに降りていった。
なんということない、デジァ・ブというやつだ。よくあることだ。
なのに俺は、用もないその駅で降車していた。そして、彼女を探した。なんでこんなことをしているのかわからない、でもなにか不思議な力で操られているかのように、彼女を探した。
那美…。
「団長、寝てましたよね、今」
那美の声がすぐ隣で聞こえた。
ぼんやりとした頭のまま辺りを見回すと、闘技場のような丸い造りのホールに座っていた。
ああ、会議中だったっけ、今。
なんだか、大事な何かをこの手に掴んだ気がしたんだけど、思い出せない。
まあ、夢って結局そんなものだけど。
「寝てたに決まってるデショ。最近なんでこんなに多いんだろうね、会議。俺たちの専門は前線でしょ~」
「誰かさんのおかげで出世しちゃったからでしょ。
ほんと、座ってるのって苦痛だわ…」
阿伏兎と二人で那美に文句を言う。
「ええ~。私のせいじゃないですよ。第一、宇宙海賊王になるには出世しないとだめでしょ!」
と言って、話を真剣に聞いている那美。
あーあ。メンドクサイなぁ。もっと単純な世の中になればいいのに。