第1章 プロローグ
屍累々、死の惑星。
ここを歩き続けて何日たっただろう。
不思議と空腹はなく、ただひたすらに足がどこかへと向かう。
そんな中、半分崩れた橋で足止めをされた。
向こう側まで数メートル。普通の人間なら飛び越えられる幅ではない。なのに、なぜだろう。私にはそれが障害には見えなかった。
ふわりと地面を飛び越え、タトンと軽い音を立てて橋の向こう側に到達。
すると後ろからひゅぅと口笛が聞こえた。
「やぁ。いい暗闇の夜だね」
振り向けば夜なのに傘をさす男が橋の向こう側に立っていた。声は意外にも若い。
この星に来てやっと会えた生きた人間なのに、私はなぜかうれしさがわかなかった。
ただ、“ああこいつだ”とこの惨状を作り出した人間だという確信が湧いた。
「星が一つも見えないよ」
「そうですね。この星にはまるでよく似合う」
男はひょいと橋を飛び越えて私の目の前に立った。
「あなたがこの惨状を作ったんですね」
「あ、バレた?
その割に落ち着いてるね。余裕?…ますます興味深いなぁ…」
顔を上げればまだ少年のようだった。
私のその言葉に自分の顎をさすりながら私を上から下から見る。
「あの跳躍力、普通の人ではなさそうだし。
この星の人間でもなさそうだし…」
と独り言を言いながら。
私はその場から身をひるがえして逃げたい気持だったが、絶対に逃げ切れないという確信があった。
そのため、目を見開いたまま少年の次の言葉を待っているしかなかった。
「う~~~ん。勘も鋭いみたいだね」
私の様子に気付いたのか感心したように言って、ある選択肢出した。
「俺はこの星の<人間>を皆殺しにしなきゃならないんだけど。
どうする?ここで俺に殺される?それとも…偶然発見された『夜兎』として一緒にくる?」
手渡された選択肢、私がどちらを選ぶかは明白だった。