第1章 空焦がれ、忍び愛
どんな言葉が返ってこようが、どんなに蔑まれようが
リヴァイはリリーとの関係を壊す覚悟が出来ていた。
だが、リリーから返ってきた言葉は、リヴァイの予想を反する内容だった。
「私も…お兄と血が繋がってなかったらどんなに良かったかって何度も考えたよ…。」
「………は?」
「変だと思ってた、って言ったでしょ?結構前から思ってたんだ。もしかしたらお兄とは血が繋がってないんじゃないか、って。」
「………。」
「髪の色が違ったからかなー…私もお兄の事をお兄ちゃんって思った事なんて一度も無いよ。だって、ずっと…。」
好きだったからーーーー
「…ッ!!!」
振り向いたリリーは泣いていたが、リヴァイが初めて見た笑顔だった。
リリーもリヴァイを愛していたのだ。
リリーは薄々リヴァイが兄ではないと気付いていた。
地下街に居た頃、倒れるリリーを何度も口移しで助けていたリヴァイ。
リリーがリヴァイを一人の男として認識するまで、そう時間は掛からなかった。
赤髪で生まれてくる人間はこの世に滅多に居ない。
リヴァイは知らないだろうが、リリーは兵士達や民衆に本当に妹なのかと問われる事は少なく無かった。
何度も何度も、気持ちを押し殺した。
どんなにこの日が来る事を待ち望んだか
ケニーから事実を聞かされた時も、リヴァイの口から聞かされた時も
リリーは嬉しさのあまり泣いていたのだ。
リリーの顔を見た瞬間、リヴァイは無意識の内にリリーを抱き締めていた。
「へ…?お、兄?」
「俺もだ…。ずっと…っ、お前を愛していた。」
「う、そ……。」
数年もの間交差していた想いが交わる。
リヴァイとリリーはどちらからとも無く、ゆっくりと唇を合わせた。