第21章 「寒さなど吹き飛ばして」/明智光秀
すっかりと雪が降りしきる寒い季節が巡ってきて、
寒さにかじかむ手を火鉢に近付けて、
暖めながら光秀さんの帰りを待つ。
今日は新年の挨拶があったから、
信長様に仕えるたくさんの家臣の人達が、
続々と大阪城へ挨拶に来られていた。
もちろん私も織田家縁の姫として、
常に信長様の隣で与えられたお役目を果たしたのだけれど、
いつまでたってもやっぱりああいうのには慣れない。
はぁ……と少しだけため息をついて、
宵闇の中降りしきる雪を見つめる。
外はすっかり暗くなっていて、
私は宛てがわれた部屋で、
信長様に安土の様子を報告している光秀さんが戻ってくるのを待っているところだった。
「戻ったぞ」
「あ、お帰りなさい!廊下は寒かったですよね……!」
すっと音も立てずに開かれた襖からは、
愛おしい人が部屋の中へ入ってくる姿が見えた。
明日には大阪を立ち、
安土へ戻ることになっているので、
今後のことを話していたのだろうと予想する。
「こんな薄着で……ほら、こっちも着ろ」
「わっ」
光秀さんが安土から私が持ってきた手荷物から、
もうひとつ羽織を引き出しそれを私に着せる。
どこかぶっきらぼうな口調だけれど、
それは私を心配しての言葉なのだと理解している。
だからこそ私はちょっとしたことでも嬉しくなってしまう。