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イケメン戦国 《短編集》

第20章 「愛らしい小娘」/明智光秀


───光秀さんの自室に戻ってきてしばらくが経つ。
私はというと机の上で文を書いたり、
書類を分けたりしている光秀さんの膝の上にいた。

「光秀さん、せめてここから出してくれませんか?」
「駄目だ、信長様に監視するよう命令されたのでな。
どうせお前はその身体でも針子仕事をするつもりだろう」
「うっ……」

完璧に図星だった為に何も反論することができなかった。
でも流石に何も出来ないというのは暇で、
何よりも光秀さんの仕事の邪魔はしたくないのだ。

「お前は俺の膝の上にいて、
『邪魔ではないか』と思っているだろう」
「そ、それは……」
「俺はそうは思ってないぞ。
こうして一日中、
お前と共に居れるのだから邪険になど思うはずがない」

じっとこちらを見下ろしている光秀さんの瞳がそれを示していて。
その瞳には『愛しい』という光秀さんの想いが隠れもせず見えていた。

「ず、ずるいです……!!」
「なんだ?素直に述べただけだろう」

ぎゅっと光秀さんに擦り寄れば、
その暖かく大きな手が優しく私の頭を撫でてくれる。

「それにしては……元服した歳くらいか?」
「え……あ、そうですね。
大体十四、五歳くらいでしょうか。
確かこの時代の女性の成人は十歳前後でしたっけ?」

「ああ。お前の時代では元服のことを”成人”と呼ぶのか?」
「はい。正確には儀式ですから”成人式”ですけど」

光秀さんのスパルタ教育によって、
この時代の知識もあらかた身についた私は、
こうしてこの時代での常識で会話を広げられることにとても嬉しくて胸が温かくなる。

それからも度々会話をしつつは、
光秀さんが黙々と仕事を進めている内に何だか安心して、
私は重くなった瞼をそっと閉じた。
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