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イケメン戦国 《短編集》

第19章 「密かな誓いと幸せを」/織田信長


それと同時に自分はこの時代にはいてはいけない存在だから、
いつか消える人間だから、
きっと心のどこかでそう思っていたのかもしれない。

「信長様……誕生日おめでとうございます」

私は大きな桜の木の下で、
二人揃ってしゃがみこみ、
青空を見上げる中、
今日言いたくてまだ言えてなかった言葉を告げる。

「ああ、ありがとな」 

信長様は嬉しそうに私の頭を撫でて、
自分の肩に抱き寄せる。

「信長様。今は……幸せですか?」
「ああ、今までにない程に幸せだと思ってる」

今まで幸せも悲しさも後悔も人ならば持っている感情を押し殺していた為か、
知らなかったこの人がやっと『幸せ』だと言ってくれた。

こんなにも嬉しいことはないだろう。
そして密かに凍っていた信長様の心に、
暖かいものを与えられたのなら、
いや戻すことが出来たのなら、
それ以上の功績はないんじゃないだろうか?

「信長様、何か欲しいものはありますか?」
「欲しいもの……か」
「やっぱり、
あれだけ贈ってもらっていると難しいですかね……」

広間に運び込まれていた、
同盟を結んでいる大名や家臣たちからの贈り物の数々。
ぎょっとするくらいに多かったことを覚えている。

「そうだな……月見がしたいな」
「月見……ですか?」

言われたことが予想外だったが為に、
きっと今の私の顔は驚愕の色を見せているだろう。

「貴様と二人で、な」

そっと青空を見上げていた顔がこちらに向いた。
私は幸福感が胸を満たす感覚を覚えつつ、

「そうですね、しましょう」

信長様が望むのならば私はそれに応えよう。
私にできることがあるならば、
それを精一杯にやり遂げよう。
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