第18章 「今日も幸せな日々を」/徳川家康 《家康BD2020》
どれくらい時刻が経ったかは分からないが、
結構な時間居続けていたようだ。
「なんだこんなとこにいたのか」
不意に入口付近から低い声が聞こえた。
「光秀さん、珍しいですね。
こんな時間に安土城にいるのは」
入口で壁に背を預けてこちらを見ているのは光秀さんだった。
普段この時間は任務でいなかったはずだが。
「信長様に呼ばれてな、帰ってきたのだ」
「信長様が…?」
「あぁ」と光秀さんは頷いて、
「そういえば小娘がお前のことを探していたぞ」と、
光秀さんはニタニタと怪しげな笑みを浮かべながらそう言ってきた。
「あの子が?」
あの子が俺を探している……?
なにかあったのだろうか。
「ありがとうございます、では。」
俺は医学書を元に戻してさっさと書庫から出ていった。
出る時にまたもや光秀さんがニヤニヤしていたが、
俺は気にしないことにしてあの子の元へ向かった。