第17章 「桜の季節」/上杉謙信
隣でお酒を飲んでいる謙信様を見てみると、
嬉々として梅干しを食べている。
「ん?なんだ、舞。食べたいのか?」
「え……いえ!!
ただ嬉しそうにしてるなと思っただけです」
視線に気付いていたらしく、
謙信様が梅干しを差し出そうとするのを焦りながらどうにか止め、
見ていた理由を素直に伝えることにした。
「そうか」
どうしてか謙信様が嬉しそうな顔をすることに私は疑問を感じずにはいれなかったが、
嬉しそうなら良いかと気にしないことにした。
「舞は素直だね」
「そうですか?」
謙信様との会話を聞いていたらしい義元さんが、
にこやかに微笑みながら私にそう言った。
自分が素直なのかというのは分からないのだが、
義元さんが言うのならそうなのかなぁ……と思いながら、
私はお酒ではなくお茶を飲む。
「佐助も素直だしな。
現代人というのは嘘が下手なのか?」
「まあ、それは人によりますね」
信玄様がうんうんと頷きながらも、
疑問があったらしく佐助くんに聞いている。
確かにどちらかといえば戦国時代を生きる人よりも、
現代人の方が隠し事は上手くないのかもしれない。
そこはどうなのかは定かではないのだけど……。
「でも佐助の場合は、
舞とは対照的に顔には出ずらいよね」
「俺は生まれつき表情筋が死んでるので、
感情を顔に出せるかと言われると無理ですね」
義元さんと佐助くんの会話を聞いていると、
私はそんなに顔に出てるのだろうか……?
と疑問に思ってしまう。
「まあ、天女は素直な子だからな。
そこが魅力の一つだと思うが」
「信玄と同意見なのは気に食わないが舞は本当に素直だ。
そこが魅力の一つだというのは認めるが」
そうなのかなぁと考えあぐねていると、
信玄様だけではなく謙信様にまで言われているので、
多分そうなんだろうなぁと何となく分かったような気もするが……。
その後も色々と話しながら、
みんなでの花見は続いて────。