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イケメン戦国 《短編集》

第17章 「桜の季節」/上杉謙信


「綺麗ですね」
「ああ、そうだな」

私と謙信様は2人きりで桜を眺めることにした。
他のみんなも各々自由に過ごしている頃だろう。

隣で桜を見上げている謙信様は、
どこか儚げでだからか絵になっている様に見える。

「謙信様は、桜は好きですか?」
「いや、そうではなかったな」

『そうではなかった』という言葉に私は引っかかり、

「昔は嫌いだったってことですよね。
今は違うってことですか?」

足を止めた謙信様に私は疑問をぶつけてみる。

「ああ、その通りだ。
昔は嫌いだったが、
今は……お前がいるからな。
愛しい女の好きなものを俺が愛せなくてどうする」

振り返った謙信様がギュッと私を抱き締める。

「お前の好きなものだから、
俺はこうして毎度佐助が開いていたこの花見にも、
何の憂いなく参加する事ができたが……。
やはりダメだな。
お前とこの景色を共有するのは楽しみであったが、
いざ共に来ると、
お前が消えてしまいそうなくらい綺麗で儚くなっていた」

力強く私を抱き締める謙信様が、
ポツリと私にそう囁いたのだ。
私としても桜の景色の中を歩く謙信様は、
とても綺麗で同時に儚く見えていた。

その言葉を聞いて、
『あぁ……謙信様も同じことを思ってたんだ』と、
きっと不謹慎かもしれないが嬉しくなっていた。

「お前を桜が連れ去ってしまう前に、
この場から去らないとな」
「連れ去る……ですか?」

どこか急いでいるような不安な声に、
私は少し上にある謙信様の顔を伺う。
その目は冗談で言ってるのではなく、
本気で真剣にそう言っているのだと分かった。

「謙信様私は連れ去られたりなんかしませんよ。
ずっといつまでも謙信様のお傍にいます」

不安そうな顔をする謙信様が、
喜んでくれるように私は謙信様の頬に手を添えて、
大好きな瞳を真っ直ぐに見つめてそう言った。

「……ああ、そうだったな。
舞、決して違えてくれるなよ」

優しく満足気な笑みを浮かべる謙信様の顔は、
やっぱり私の大好きなところの一つで、
自分の胸の鼓動がとくんと高鳴る音がした──。


【the end】
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