第16章 「永遠の愛」/織田信長
外はすっかり暗くなっていて星がキラキラと輝いている。
夜風が冷たいからか火照った体に心地良い。
「このような場所に一人でいると襲われるぞ。
相変わらず警戒心の薄い」
「え……?」
空気を震わす低い声が斜め後ろから聞こえてきた。
驚いて後ろに振り返ると取引先の社長だった。
そして会ったこともないはずなのに、
その人は何故か私をよく知っているかのような言葉をつい先程発していなかったか……?
「相変わらずぼんやりしておるな」
ふっと微笑んだその人は、
そっと私の腕を引き寄せその体に抱き寄せた。
「?!!」
驚いて硬直している私を見て、
その人は面白そうに笑っている。
初めて会った人なのに、
どうしてこんなにも安心するんだろう。
なんでこんなにも泣きたくなってきたのだろう。
分からないことだらけで、
私の頭の中はぐちゃぐちゃになっていく───。
そして考えて、感じて、また考えた結果。
ようやくたどり着いた答えは……
「信長、様?」
「フッ、ようやく思い出したか。
随分と時間がかかったな」
そうやって、
どこか嬉しそうに笑うこの人は私が愛した……愛してる人だ。
そして思い出した。
ずっとずっと気になっていたことを。
──五百年前、私はこの人と共に生きた。
元々は今の時代を生きていた現代人だったけど、
京都旅行中にワームホールに巻き込まれた。
私がたどり着いたのは燃え盛る本能寺だった。
そこで成り行き上で助けた人こそが、
織田信長……前世の私が愛した人。
ようやくまた逢えたと思うと、
私の視界は涙で滲んできた。
「信長様っ……!」
ようやく思い出した私は、
泣きながらその体に自分の腕を回した。
「泣き虫なやつだな、貴様は」
フッと幸せそうに笑う顔を見て、
流れていく涙はまた増えていく。
ようやくまた逢えた。
五百年前『また逢おう』と誓ったあの日から五百年という時を経て。
「泣くな、舞」
ポロポロと流れている涙を、
信長様の指が優しく拭っていく。
慰められてもその優しさが愛おしくて、
止めたくても涙は止まってはくれなかった。