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イケメン戦国 《短編集》

第10章 「また会う日まで」上杉謙信


相変わらず、
もう何杯目なのか分からないほど呑んでいるのだろう。
謙信様に会う度にお酒を呑んでいるから、
お酒好きなのはものすごく伝わってくる

「その荷物はなんだ?」

…え?
急にそんなことを言われたから、
私はポカーンとしてしまった。

「これは依頼をくれた方から貰ったんです、お礼にって」

腕に抱えていた風呂敷を見て私はそう答えた。
謙信様はじーっと見つめているだけで、
私はどうすれば良いのか分からずそわそわしてしまった。

「…少し歩くか」

謙信様は急に立ち上がり、
私の手を引いて歩き出した。

「け、謙信様…?」

今日は何だかいつも以上に急なことが多い気がする。



何も喋らず、
ただ黙ったまま謙信様に掴まれていた手も、
まるで恋仲のように繋いだまま歩き出す謙信様に大人しくついて行っていると、
いつの間にか城下町の外れにある草原に来ていた。

「わ〜っ」

現代では見ることも少なくなってきた自然の花畑に、
私はついつい感嘆の声を出してしまった。

「そんなに珍しいか?」
「こ、子供地味てますよね……」

謙信様に飽きられただろうか。
ただ自分の正体を言う訳にはいかない。
散々歴史を変えてきたのだ。
申し訳ないけど、
謙信様に自分のことを伝えてしまうことは出来ない。
きっと佐助くんも遠い国が故郷だと言っているだろう。
謙信様には私が、
佐助くんと同郷であると言っているのだから。

「いや、無邪気で愛らしいと思った」
「え……?」

今何だかとんでもないことを聞いてしまったような……
気のせい?それとも聞き間違い?

「舞」
「は、はい!」

名前を呼ばれて反射的に返事をしてしまった。

「近々、戦が起きるだろう」
「え……」

驚いている私の頬を謙信様は優しく包んだ。

「?!!」

ふっ…と謙信様はため息を漏らす。
私はなにか良からぬことでもしただろうか?
そう思って顔を上げ、
何やら思い詰めた顔をした謙信様がじっと私を見つめていた。
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