第10章 「また会う日まで」上杉謙信
──ふとよく佐助くんと話す時に通っているお茶屋さんに見慣れた姿があった。
その人は髪が白っぽい金色の髪で、
左右の瞳の色の違う佐助くんの上司である人。
どうやらあちらも私に気付いたようで、
少し驚いた顔でこちらを見ていたが、
何やら片手を挙げるとまるで『来い』という風に手を振ったのだ。
流石に無視する訳にも行かないので、
ちょこちょこと小走りに謙信様に近付く。
「お久しぶりです、謙信様」
「…あぁ」
素っ気ない態度であるが、
私に少しだけ心を寄せてくれているというのは知っているので、
少しだけ頬が緩むような感覚があった。
「こんな敵地のど真ん中にいて良いんですか?」
「敵地だ云々は関係ない。
そもそも俺がそんなことを気にするとでも?」
「ああ……そうでしたね」
前に会った時も謙信様にそう質問した時、
謙信様は今日とうって変わらないことを言っていた。
「お昼からお酒を飲んでるんですか?」
「まぁな。
昼も夜もいつ呑んでいたって特に気にすることでもないだろう?」
「あんまり飲みすぎないでくださいね」
まったくいつも通りなのだから、
前に会ったときから一カ月も経ったとは思えない。