第9章 「星空の下で愛らしい誓い言」/豊臣秀吉《BD小説》
私自身も、
針子として織田軍の世話役として働いている以上、
安土城に滞在している方が秀吉さんの御殿にいる時よりも当然長いが、
針子の仕事でうまくいかないことがあれば、
こうして外に出て外の空気をめいいっぱい吸って気分転換をしている。
私よりも忙しく重責なお役目を持つ秀吉さんは、
そんな時間の余裕さえないことは知っていた。
だから少しでも気晴らしになればいいと誘ってみたのだ。
案の定、
秀吉さんはどこかリラックスしているように見える。
信長様の左腕として働く秀吉さんは、
信長様の次に忙しい人だ。
だけど仕事をしている時の姿はとてもいきいきしていた。
光秀さんも右腕と言われているので、
きっと忙しいことには間違いないんだろう。
あまりに安土城で見かけることは少ない。
「そうか……ありがとな、すごい気晴らしになった」
「ふふ、それは良かったよ」
私をギュッと抱きしめながら、
秀吉さんはそっと囁いてくれた。
私の思いは届いていて叶っているのが分かった。
「秀吉さんは何かしたいことはある?」
「そうだな…。
早く信長様たちに同居を認めてもらうことだな」
そういえば…そうだったな。
今日は許してもらえて御殿へいたけれど、
未だにみんなから同居の許可は得ていない。
正直なところ武将ファンの人たちには、
卒倒するようなことが起きているのは確かだ。
前に佐助君が遊びに来た時に、
『秀吉さんという兄貴分がいなくなったから、
信長様たちが兄代わりになるって言われて…』
『……それはすごく羨ましいな』
という会話をしたのを思い出した。
どうして信長様たちが私の兄代わりになると言い出したのか私には分からなかったけど、
秀吉さんなら何か知ってるのかな?