第1章 「花の香り」 徳川家康
「あんたにあって色んなことを知って、
今まで興味なかったものや景色も、
あんたが隣で楽しそうにはしゃぐ姿を見たら段々興味を持つようになった…。
昔の俺はきっとこんな幸せの気持ちになんてならなかったと思う…。」
いつも天邪鬼で素直になれない俺の心から本質から見てくれてた舞は、
俺に『弱さを認める強さ』を教えてくれた。
いつも些細なことで笑い、怒り、
悲しんで突き放してきていた俺に、
いつも真っ向から立ち会い、
いつも姿だけの俺じゃなくて心から見つめてくれるこんな愛おしい存在を、
もう突き放すことなんて出来なくて、
何よりもう離せなかった。
「ねぇ、舞」
「なぁに?」
「今はまだ準備も出来てないし、
信長様を説得しなきゃいけないけどさ…。
──徳川の性、貰ってくれる?」
驚いた顔をしてこちらを見上げていた舞の瞳に、
徐々に涙が溜まってきていて、
「本当に?私で良いの?」と、
嬉しそうで不安そうな複雑な顔をして俺に言ってきた。
「当たり前でしょ、
俺が愛おしいと思うのは、
舞、あんたしかいないんだから」
そう言えば涙を流しながらニッコリと花のような笑顔を浮かべて
「不束者ですが、よろしくお願いします」と、
笑顔からこぼれ落ちる涙が太陽の光を纏っていて、
とても美しいと思った──。
【the end】