第1章 プロローグ
桜の花がひらひらと舞う、晴れた日。
私は大学一年生となった。
目まぐるしく過ぎていく日々の中で、なんとなく入ったアカペラサークルの新人歓迎会に参加している。
正直お酒は飲めないし、先輩は泥酔して酷く絡んでくるし最悪。
二次会までは参加したけれど、流石にもう帰ろうと思っていた時だった。
「ねえ、このままだとカラオケオールになる可能性大だし、私の行きつけのお店に行ってみない?マジで楽しいから!」
ほんのり赤い顔の2年の先輩は、私の腕をがっしり掴んで離さない。
「いえ、そろそろ帰ろうかと思っていたんですけど...」
「そんなこと言わずにさ〜!あんま飲んでないし、つまんなかったでしょ?飲み会。最後に楽しい思いさせたいんだよ〜!」
終電まででいいから!と強引に腕を引っ張られ、私達は居酒屋を後にした。
しばらく繁華街を歩いていると、何やら怪しい路地へと先輩は進んでいく。
バー、キャバクラ、ホスト...アングラ感が否めない、危険な香りのする通りだ。
「...先輩、本当にこんな所に行きつけのお店なんてあるんですか?」
「もうちょっとだから!全然怪しい店じゃないから安心して!」
本当に大丈夫かな...。
不安を抱える私を他所に、先輩は軽い足取りでどんどん進んで行く。
「ここよ!シアタースターレス。一度行ったらもう虜になっちゃうよ〜!チームWの黒曜が最っ高なの!」
Theaterstarlessと書かれた入り口を開けると、凄く綺麗な銀色の髪のスタッフさんが出迎えてくれた。
「ようこそ、ショーレストランスターレスへ。って...久しぶりだね。今日はお友達も一緒なんだ」
ハイヒールが似合う妖艶で中性的な美しさを持つ男性は、私へニッコリと微笑みかける。
「初めまして。ワタシはチームP所属のクー。時間の許す限り、楽しんでいって。...キミは今日もチームW目当て?」
私から先輩へ視線を移すと、からかうようにニヤリと笑う。
「そうなの!黒曜、今日もかっこいいんだろうな〜...楽しみ!」
先輩の目はハートになっている。
「本当ぞっこんだね。羨ましい限り。...キミにも、お気に入りが見つかるといいね」
どうぞこちらへ、と案内された席は殆どが満席だった。