刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第37章 修行
きっと大倶利伽羅さんなりの考えがあったんだろう。彼が考えなしに行動するとは思えない。
もしかしたら…私が泣くと分かっていたから黙って出て行こうとしたのかも知れない…
絶対不細工であろう泣き顔を見られているのが恥ずかしくて目を逸らしたら、柔らかな感触が唇に触れた。
啄むようにちゅ、ちゅといつもの口付けをされて、ざわざわしていた心が落ち着いていく。
唇に触れていた温かな感触が離れていく時、まるで離れるのを惜しむかのように少し吸われ、その唇が今度は目元に移動する。そして、涙が溢れている目尻にちゅ、と軽く音を立て口付けられ、そっと目を開けた。
「伽羅ちゃん…」
「…」
「修行に…、今から行くつもりなんだよね…気を付けて行ってきてね…」
「ああ…お守りがあるから大丈夫だ」
「お守り?」
いつも戦場に出る時に渡してるお守りだろうか…?と頭に疑問符を浮かべていると、大倶利伽羅さんは顔を少し傾げてシャツをクイッと少し引っ張ってから「ここに…」と首元を指差した。
指差した場所には赤い印。
私が付けたキスマーク。見えづらい筈の褐色の肌にくっきり付いているそれを目の当たりにして、我ながらなんて大胆な事をしてしまったんだろうかと羞恥に襲われた。