第36章 嵐の夜

つい責めるような口調になってしまい大倶利伽羅はハッとした。そして己はこんなにも狭量だったかと嫌気が差した。


「すまない…」

「ううん、私が悪いから…」

「…何かあった時は俺の所に来い、わかったな」

「うん…わかった…」


我ながら独占欲が強すぎる…
そう思うものの彼女の事になると己でも驚くほどに抑えが利かなくなる。

大倶利伽羅の胸元に顔を埋めている彼女の肩が、雷鳴が聞こえるたびに揺れている。
余程怖いらしい。

そういえば…
彼女の両親が亡くなったと知らされた時も、今のような嵐だったな…と大倶利伽羅は思い返していた。

あの時は彼女自身の霊力が乱れて天候にも影響を及ぼしていた。当の本人は悲しみに打ちひしがれていたため、それが自分の霊力の影響だとは気付いていない。

――もしや

あの日の精神的苦痛と、彼女にとってはそれに追い打ちをかけるような酷い嵐…まるであの日の出来事が呼び戻されるかのように体が勝手に反応しているのかも知れない…

だが、この件を彼女に言ったところで何にもならない。それどころか思い出したくない事まで思い出させてしまうだけだ。

自然と彼女を抱き締めている大倶利伽羅の腕に力が入った。