刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第1章 審神者になる
その姿を見て酷く慌ててしまい、半ばパニックになりながら手入れした。「血で汚れているくらいで丁度いい。だから気にするな」と、山姥切さんが優しく言ってくれたのは今でも忘れない。
遠征にも一振りで行ってもらったり、ご飯も一緒に作り一緒に食べた。
山姥切さんは言葉は少なかったがとても優しかったので、打ち解けるにはそう時間はかからなかった。
そうはいってもこの広い本丸で二人だけの生活は思っていたより心細く、怖がりの私は何度か夜中に目が覚めてしまい眠れない夜が続いていた。
「主?入るぞ」
「や、山姥切さん!?こんな時間にどうしたの?」
「何かあった時同じ部屋に居た方があんたを守れるからな…」
いつもの如く眠れずにいると、突如布団持参で現れた山姥切さん。突然の彼の行動に目を見張っていると、少し離れた所に自分の布団を黙々と敷き、お行儀良く布団の中に収まり私を見た。
「あんたも早く寝たらどうなんだ」
「あの…ひょっとして…私が眠れないって事知ってて来てくれたんですか…?」
「ち、違う!あんたを守るためだ!」
顔を赤くして否定した後掛け布団を深く被ってしまった山姥切さんだけど、私が眠れていないから心配して来てくれたんだ、とその様子で分かってしまった。
「ふふ…」
「なっ、何を笑っている!」
「何でも無いです。山姥切さんおやすみなさい」
山姥切さんの優しさが嬉しくて胸の内がぽかぽかした。そしてその日を境にぐっすり眠れるようになり、初めて刀を鍛刀したのはその一週間後だった。
時間は3時間と表示されていた。
「僕は燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだよ ……う~ん、やっぱり格好つかないな」
「…」
格好良すぎる。なんで男士達はこうも見目麗しいのか…神様だからなの?
燭台切さんはキラキラしていて微笑んでいる。
放心状態の私の隣で山姥切さんがオロオロしているのが視界に入っていた。