刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第5章 ある日の出来事
そう言って笑うと、大倶利伽羅さんは溜め息をつく。面倒臭そうにしながらもその場を立ち去ろうとしない彼は、やっぱり優しいなって思った。
いつも話しかけても短い返事で去って行ってしまう大倶利伽羅さんと一緒に居られる事がなんだか嬉しくて、小虎ちゃんを撫でながらここぞとばかりに色々とお話をした。
――ほとんどが私の独り言みたいになっていたけど、彼は黙って聞いてくれていた。
そこへ五虎退の虎を呼んでる声が聞こえた。
途端にピクンと耳を立てて2匹共膝からピョンと飛び降りて駆けていく。
「癒されたぁ~~!」
ぐーんと腕を伸ばしてから立ち上がり、戻ろうと一歩踏み出すと、暫く同じ体勢だったせいか転びそうになった。
「あっ!」
すっと褐色の手が伸びてきて体を支えられる。
「…気をつけろ」
「ご、ごめんなさい!」
距離が近くて思わず赤くなる。主どこですかー?と長谷部の声がして、「やばっ!長居しすぎちゃったっ!」とペロッと舌を出すと、大倶利伽羅さんはふ、とほんの少し微笑んだ。
珍しい表情に驚いたら、途端にふいっと目を逸らされそのまま何も言わずに去って行ってしまった。
「あんな…優しい顔で笑うんだ…」
暫く大倶利伽羅さんの背中を見つめていると、また長谷部の声がして急いで執務室に戻った。