刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第5章 ある日の出来事
この日の本丸は雨が降っていた。
ザアザアと響く雨の音。
庭に咲いている紫陽花がとても綺麗に見えて、傘をさして思わず庭に出た。歌仙が大事に手入れしている紫陽花だ。
雨に濡れた紫の花びらは溜め息が出るほど美しかった。
暫く堪能して、さぁそろそろ戻ろうかと思った時、地面から出ている木の根っこに足をとられ見事に転んでしまった。
「痛っ!!」
傘をさしていたせいかうまく受け身がとれず、スカートが捲り上がり膝や脛が傷だらけ…
傷口からはドクドクと血が流れていて、痛くて痛くてその場にうずくまった。
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庭にふと目をやると、傘をさしたあいつが紫陽花の前で佇んでいる光景が目に入った。
そのまま見ていると、豪快に転んでいるあいつの姿。
チッと舌打ちして、駆け寄る。
「あんた…ドジだな」
突然の声に、こいつが驚いたように俺を見上げた。
うずくまっているこいつは足から血が流れている状態だ。それをみて俺は思いっきり顔をしかめる。
「少し我慢しろ」
急いで片手でこいつを荷物を持つように小脇に抱え、傘をさしたまま縁側まで連れていくと、途中でこいつは焦ったように口を開いた。