刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第50章 甘い夜
「ああ…」
「あの時…伽羅ちゃんが近侍じゃなかったらどーなってたかな」
「どうだろうな…だが、遅かれ早かれこうなっていただろう」
彼がわずかに口元を緩める。 ほんの数ミリの変化なのに、誰よりも近くにいる私にはそれがとても優しく見える。
「最初は塩対応すぎて、私なんかに興味なんてないのかと思ってた…」
「そんなことはない……あの頃は…あんたが出陣後におかえり、と言ってくれるのが心地よかった」
「えっ……」
静かだけど深くて、胸の奥に沈んでくるような声。その声音にだけ未だに敵わない。そんな声でさらりと言うから心臓が一気に熱くなる。お酒じゃなくてこの人のせいで酔わされてる気さえする。
「……あの一言で、ここに居場所がある気がしていた」
思わず静かに息を飲む。
彼がこうして少しだけ自分の心の内を言ってくれる瞬間は、何度でも胸を締めつけられる。
「そんな風に思ってくれてたんだ…」
「言ってなかったか」
「初耳……その時に聞きたかったなぁ」
すると彼は照れ隠しするように目を逸らし、空になったお猪口にお酒を注いだ。
「…今言っただろう、それでいい」