刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
舌と舌が重なり合って、ぴちゃ…くちゃ…と絡み合う音と、お互いの息遣いがシンとした廊下にやけに響く。
やっと口付けが終わった頃には最早思考も溶かされて、大倶利伽羅さんの唇と舌の感触だけが脳に焼き付いて離れない。
「はぁ…はぁ……伽羅ちゃん…」
呼吸が乱れている私とは違い、一切乱れていない大倶利伽羅さんは、その綺麗な金の瞳でじっと私を見下ろした。
見つめられている間、少しずつ頭がはっきりしてきて理性が戻ってくる。今は夕刻だが、西日が差し込む廊下はまだ明るい。急に誰かに見られてなかったか恥ずかしくなり、慌ててキョロキョロと辺りを見渡していると、大倶利伽羅さんはポツリと言葉を発した。
「……あの者は俺達の関係を知っていたんだな」
「あ、あの者?……あぁ、シーちゃんのこと?……うん、知ってる。ごめん…バタバタしてて伽羅ちゃんに言いそびれてた………何かあった?」
「……いや……何も無いが、それならもう別々に過ごす必要はないんじゃないのか」
「あ…うん……そうなんだけど………隣の部屋にいるからやっぱりまだちょっと…」
部屋にいないことが多いシーちゃんだけど、いつ戻ってくるかわからないからやっぱり安心していられない。