刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
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「大倶利伽羅様…」
背後から聞こえた媚びるような猫撫で声に、大倶利伽羅は片眉をあげた。
この者が露骨に俺に近づくようになったのはいつからだったか…
近々ここを出る、と言っていたのに何故か延期になった。理由を聞いてもあいつもわからないとのことだった。一体どうなっている。
「大倶利伽羅様…」
もう一度聞こえた猫撫で声に、堪えていた溜息を露骨に吐き出して大倶利伽羅は苦い表情を浮かべる。
どうにかしたいが相手は人間の女である上に客人だ。
この本丸で預かっている以上下手な行動は出来ない。それに今では恋仲である審神者も友のように仲が良い。
どうして俺がこんな目に…
そう思いながら無意識に出た二度目の溜息が虚しく地に落ちた。
大倶利伽羅が何も言わないのをいいことに、女の行動は日を追うごとにエスカレートしていった。
事あるごとに大倶利伽羅を呼び、ボディタッチを仕掛けてくる。色目を使われているのが分かった時には吐き気がした。
だが審神者から女の力になってあげて欲しい、とこの本丸に来た時に念を押されていた為、どうにも邪見にすることが出来ない。それが何とも歯痒かった。