刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第45章 大倶利伽羅の憂鬱
彼女の初期刀である山姥切がいよいよ修行に出るらしい。
修行に出る少し前からあいつがそわそわしているのが手に取るようにわかる。それは前田の時よりも、今まで見てきたどの刀剣の時よりも落ち着かない様子だった。
「伽羅ちゃん…国広くん、お手紙書いてくれるかな…」
「ちゃんと無事に帰ってきてくれるかな…」
「心配だなぁ……心配で心配で仕方ないけど、どんな姿になって帰ってくるのか楽しみでもあるんだ…でも、やっぱり寂しい気持ちの方が大きいかな…」
はぁ……ずっとこの調子だ。
口を開けば、山姥切のことばかり。
山姥切はあいつの初期刀だ。あいつにとっては特別な存在なのは重々承知しているつもりだったが、いざそれを目の当たりにすると面白くない。
それどころか、彼女のそんな様子に多少のいら立ちすら覚える。
気を紛らわそうと一人縁側で手に持っていた猪口の酒を一気に飲み干した。
「はぁ…」
あいつのことになると狭量な己が情けなく、思わず零れてしまった溜息を国永が聞きつけ反応する。しまったと思ったときには、顔を覗き込まれて面白そうな顔をしている国永の姿。
「よっ伽羅坊!こんなところで酒なんて呷って珍しいな。元気がないように見えるが、どうかしたか?」