刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第43章 ある日の出来事 5
私の言葉を聞いてあからさまにしょんぼりしている長谷部。
「口吸いではないのか、残念だなあ。やはり口吸いは大倶利伽羅だけの特権か。…まあでも頬でも良しとするか」と三日月さん。
「仕方ねぇから……受けてやるよ」
「兼さん朝からそわそわしてたくせに」
「う、うるせぇ国広!余計な事言うんじゃねぇよ!」
兼さんと堀川くんのやり取りに失笑しながら、私に一番近い場所にいる刀剣、長谷部・三日月・和泉守・堀川・前田・不動と順番に口付けた。
こんな綺麗な方達にいいのかな、なんて逆に申し訳なく思ってしまう。
「ありがたき幸せ」
「ふむ、これはなかなかだなあ」
「よぉーし!いっちょやってやろうじゃねぇか!」
「主さん、ありがとうございます」
「主君、有難うございます、全力を尽くします」
「ひっく!ダメ刀にやってもかわんねぇよ~」
不動くんの言葉に苦笑しながら皆を送り出す。
「ご武運を!行ってらっしゃい!」
それからというもの、行ってらっしゃいのキスは皆にするのが当然ということになり…
手を握るとかでも十分なのでは?と気付いた時にはもう遅く。こうなると遠征に行く皆も強請るようになり、遠征部隊・出陣部隊全員に毎日するのは流石に大変で。
結局は大倶利伽羅さんだけの特権に戻ったのは、それから数日後のことだ。